東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を理由とする、中国の日本産水産物輸入禁止の方針について、
中国側のチグハグな対応が目立ちます。強硬な主張に出たかと思えば直後に引っ込めたり、
随分宥和的な発言があったと思えば直後に撤回してみせたり、どうも一貫性がありません。

オーストリアの首都ウィーンで9月25日から、IAEA(国際原子力機関)の総会が開かれました。
初日の一般討論演説で、中国代表が、直前の国連総会では盛り込まれなかった処理水の海洋放出に対する批判を
「核汚染水」という言葉を使って展開しました。

これに対し、日本の高市早苗科学技術担当相は「中国は科学的根拠に基づかない説明をした」と反論。
放出は国際基準に沿って「安全に運用されている」と指摘し、今後も透明性の高い情報提供を続けると約束しました。

高市氏は演説後、中国側が批判を入れてきたので、こちらもその反論を急遽(きゅうきょ)入れたと記者団に明かしました。
高市氏の退席後も、中国代表が再度批判したため、在ウィーン日本政府代表部の引原毅大使が再反論する一幕もあったようです。

これだけ執拗(しつよう)に批判するのですから、中国は上から下まで一貫していると思いきや、違いました。
崔為磊・駐新潟総領事は同26日夜、着任会見に臨み、新潟の魚を「買って食べた。大変おいしかった」といい、
「汚染物の影響は1、2回食べた程度で検出されないと思うが、科学的事実に基づくべきだ」とも強調しました。

「中国にも冷静な文官がいるんだなぁ」と思っていましたら、親元である中国外務省の汪文斌副報道局長は同27日の記者会見で、
「都合よく発言を切り取られた」と釈明し、今までなら考えられないような右往左往ぶりを見せました。

また、中国は先週末から中秋節と国慶節の大型連休に入りましたが、日本行きの航空便は軒並み満席状態だそうです。

もちろん、コロナ禍で大幅な減便(コロナ前の半分以下)となったままで、満席といっても来日客の数は減少したままです。
が、より興味を引いたのは空港でインタビューに答えた以下の出発客です。

処理水の影響を聞かれても、「ほとんど影響ない」。日本で楽しみな食事は、「すき焼きとお寿司」。

中国による日本産水産物の禁輸、日本批判のプロパガンダが、世界のみならず中国国内でも効いていないことが分かりました。

私が担当しているニッポン放送の情報番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」でも先月、福島応援キャンペーンを行い、
首都圏で福島の味を楽しめるお店をリポートしました。
行く先々で処理水放出の影響を聞くと、「キャンセルばかりかと思ったら、むしろ『応援したいからお店に行く』と言って予約が増えた」
という声でした。

われわれがブレずに粛々と主張していくことで、むしろ理解を深めることができる。
情報戦の時代を生き抜く、1つのヒントなのかもしれません。
■飯田浩司

夕刊フジ 2023.10/4 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231004-DUHNHN4O4ZIXVHVX4QKBIPPSCA/