ー前略ー
 筆者の知人によれば、陳氏の資産は、数百億円以上はあるだろうという。どのように資産を築いたのかはいえないとのことだったが、
以前は医療関係に従事していた。

 ブランド品への興味は一切なし。ルーティーンは早朝の瞑想と読書、ランニング、登山。唯一お金を使うところといえば、
ミシュランの星つきレストランのシェフを引き連れて、漁船を貸し切り、釣った魚を料理してもらって食べることくらいだ。

 ちょっと凡人には理解できない優雅な独身ライフだが、いまの中国には、陳氏のように、
ある事業で莫大な財産を築き上げ、30代で「余生」に入る人も少なくないという。

・彼らが日本に移り住む理由
 こうした優雅な生活を取材していて気づくのは、彼らは、日本に対する憧れや関心はあまりなく、
日本人との接点もほとんどないという点だ。当然、日本語もできない。

 日本に対する一定の理解はあり、日本人に好意も持っているものの、努力して日本社会に入っていきたいと考えているわけではない。
あくまでも、資産のリスクヘッジや保身のために、とりあえずの転居先として日本を選んだ人々である。

 筆者が長年取材してきた従来の在日中国人といえば、留学や仕事が目的で来日した人々が大半だった。
彼らはアニメやモノづくりなど、日本の文化や経済、社会に憧れを持ち、日本語を習得した。
日本企業で地道に働き、日本人と同じような金銭感覚、ライフスタイルで生活している人も多い。
ー中略ー

 リッチで華やかな「シン・中国人富裕層」の驚くべき生活ぶりだが、そんな彼らに悩みはないのだろうか。

・母国への強烈な不安
 東京・上野で不動産業を営む中国人男性は、移住の手伝いをした後、彼らから意外な悩みを聞かされたという。
それは「ヒマすぎる」という悩みだ。

 「引っ越し後、最初のうちは慌ただしくしているのですが、だんだんと飽きてしまうようです。
その理由は、日本があまりにも静かで社会が整然としているから。
刺激が少ないらしい。騒々しくて、いつ何が起きてもおかしくない中国から来ると、物足りないんでしょう」

 そこで、わざわざ遠方にあるホームセンターまで出かけて、クギなど大工道具を「少しだけ」買ってくる人もいるという。
翌日に再び足りないものを少しだけ買いに行き、棚を作ったりするそうだ。

 来日後、しばらくすると意外な不満が出てくるという移住者もいる。

 「中国、とくに上海や北京などは超便利社会です。お金があれば、指1本動かすだけ(スマホのアプリを押すだけ)で、
右から左へ、何でもできます。

 子どもが宿題のノートを忘れたときも、アプリを使えば、業者が即座に家まで来て、学校にノートを届けるサービスがありますし、
ドリンク1杯、バナナ1本、電池1個だって、30分以内に、ほとんど手数料なしで自宅に届けてくれます。

・「日本は不便すぎる」
 一方、日本では気温37度の猛暑でも、徒歩5分のコンビニまで自分で歩いて行かなければならない。
5分も歩かなければ欲しいものが手に入らないなんて、不便すぎると思ってしまう」(都内在住の中国人富裕層の女性)

 何とも信じがたい不満だが、このように感じている富裕層は多い。
しかし、それでも日本への移住を望む人が後を絶たないのは、彼らが中国共産党に対する恐怖心や不安を払拭できないからだ。
前述の王鳴氏はいう。
ー中略ー

 だが一方で、彼らは移り気でもある。政治不安もない、安心して生活できる日本に住んでいながらも、
不満はあるし、日本に溶け込む気もない。

 前述の女性は「一定期間、日本に住んで養生したら、また戦場のような中国に戻るかもしれません。
今後の中国情勢次第かな」と語る。

 新しい中国人移住者は、日本に大金を落とし、日本経済に貢献してくれる存在だが、
はたして日本は彼らに「捨てられず」に済むだろうか。

10/5(木) 17:33配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/9fffa7ae271c54076a6d36bfd4e3b0a6561baf1a