「日本の統治時代」を経験した韓国と台湾だが、その後の日本との関係で大きな違いがあると指摘するのは
国際投資アナリストの大原浩氏だ。
半導体産業の現状を例に、韓国が「統治時代に日本から何も学ばなかった」のに対し、台湾が「多くを学んだ」と分析する。

韓国を代表するサムスン電子は、半導体の売上高で世界首位である。
成長の背景には、1980年代に「半導体王国」だった日本を脅威と考えた米国による「バッシング」があった。

日本が米国の圧力で沈んでいくなかで、
半導体が「儲かる商売」だと考えたサムスンが大型投資を行ったというのは大きな成功要因だといえる。

一方で韓国は「儲かるとなったら殺到し、ダメになったら一目散に逃げる」という特徴もある。

2008年の拙著『韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか』(講談社)では、当時うまくいかなくなっていた中国から
続々と夜逃げする韓国企業について述べた。彼らの選択は必ずしも間違っていなかったかもしれない。
しかし、一事が万事、このような傾向が「世界からの信頼」を得るために有効だとはいえないだろう。

一方、台湾を代表するのがTSMC(台湾積体電路製造)である。
半導体を受託生産するファウンドリである同社は、半導体企業の世界ランキングで取り上げられないことが多いが、
売上高でサムスンに引けをとらず、ファウンドリ市場で半分以上のシェアを持つ圧倒的巨人だ。

TSMCなしでは、アップルやAMD、NVIDIAなど世界に名だたるファブレス(自社工場を持たない)メーカーが
立ち行かないほどの状況だ。これは、創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏の、「下請け」であっても
「良い仕事をしてシェアを獲得すれば世界に名をとどろかせる企業になれる」との信念のたまものであろう。

しかも、利益や会社のエネルギーを製品の改善につぎ込み、
半導体の微細化においては世界のどのメーカーも対抗できない水準に達している。
日本統治時代からの「匠の技」を受け継いだ「現場重視」経営だと筆者は考える。TSMCは、米国やドイツ、
さらには日本などから引っ張りだこで、工場誘致の話が引きも切らない状態であることはよく知られている。

現代では、「匠の技」は一人の職人の腕前よりも、チームワークに依存する。チームの中での「相互の信頼関係」が極めて大事なのである。
より具体的にいえば、国内の製造業すべてが水平あるいは垂直に「有機的に連携」する必要があるということだ。
この点でも台湾は韓国よりもはるかに優れているといえる。

日本はかつての「教え子」である台湾が躍進したことを大いに喜ぶべきである。そして、その「好敵手」が盟友となる可能性も大きい。

日本は、ファウンドリでは影が薄いが、半導体製造装置や材料では圧倒的な強さを持っている。
2019年の半導体製造材料3品目「対韓輸出管理強化」で韓国が震え上がった。
そして「日本から学ばなかった」韓国は、結局国産化することができなかった。

日本人は少々お人よしかもしれないが、「頭を垂れて教えを乞う人々」には愛情をもって接する。
「生徒」が将来のライバルになっても歓迎する度量を持っている。

日本と敵対してきた韓国は、ずいぶんもったいないことをしているように思える。

■大原浩
夕刊フジ 2023.10/9 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231009-4ENA4FWCVVMXDFWMKYLKFBHJOY/