https://www.sankei.com/resizer/cWCEFTw8qcTbyJtgpUmzng10dIU=/0x224/filters:focal(345x245:355x255):quality(70)/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/YOH6GZGTHRN2DFRYPEBAZQAXBQ.jpg

現在、諸外国における民間防衛は、核兵器に対する防護に加えて、化学・生物兵器、サイバー攻撃、世論工作など、
あらゆる手段の攻撃に対し、被害を最小限に食い止める対策が講じられている。

日本で民間防衛の議論が始まったのは、米ソ冷戦時代の1977(昭和52)年12月、
「日本市民防衛協会」が設立されてからだ。核爆発から国民の生命・財産を守り、市民防衛に関する国家施策実現を図るため、
市民防衛の調査研究や市民運動を展開してきた。

同協会は、政界や財界、労働界、教育界などにPRを行い、海外資料の調査、収集、研究会の実施、会報発行、
国会や政府への意見具申を行った。
「万一、敵の攻撃を受けた場合、日本は専守防衛を旨としている以上、本土での戦闘が避けられず、地域住民の防護、
避難誘導が適切になされなければならない」として、民間防衛の必要性を訴えていた。

その後、日本では民間防衛の議論は下火となっていた。だが、北朝鮮の核・ミサイル開発などを受け、
2004(平成16)年9月17日、国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)
が施行された。

この法律は、武力攻撃事態などにおいて、武力攻撃から国民の生命・身体・財産を保護することを目的としている。

国や地方公共団体などの責務や、住民の避難に関する措置、避難住民などの救援に関する措置、
武力攻撃災害への対処に関する措置、その他の国民保護措置などに関し必要な事項などを定めている。

だが、日本の国民保護法は諸外国とは違い、首相に国家非常事態の宣言をはじめとする有事権限が付与されていない。
私権の制限も極めて抑制的となっている。武力攻撃事態などにおける国民の役割についての規定(義務項目)もない。
避難や救援については国民の協力を要請するだけで、応じるかどうかは任意となっている。

多くの識者が、国家非常事態法の性格を有する国民保護法の実効性に重大な問題があると指摘している。

スイスには、国民が国を守るためのバイブル本がある。
スイス政府編『民間防衛』だ。約260万部が発行され、各家庭に無償配布されている。

戦後、日本では「徴兵制=軍国主義=戦争への道」という風潮が広がったが、スイスでは徴兵制を維持している。
日本では今後も徴兵制を導入するような動きにはならないだろうが、日本人はスイス人の「自国を守る覚悟」を見習うべきである。

自衛隊だけでは国を守ることはできない。国民一人一人が、国を守ることについて真剣に考えるような社会をつくらなければ、
気が付いたときには手遅れになるだろう。
■濱口和久

2023.11/12 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231112-2HVMFFDAWZO3PAE7WSAUKVTTKI/