韓国は「自由主義経済の国」「先進資本主義経済国家」などと称しているが、本当だろうか。
歴代政権による部分的徳政令、多大な利益を上げた外国資本に対する懲罰的な措置などを見ると、そんな疑問が湧いてくる。

いままた、海外デリバティブ投資の個人損失に対して、銀行や政府が補?(ほてん)措置を講ずるかどうかが、大きな争点として浮上している。

とりわけ金融機関に対しては、契約通りの商行為であっても、多大な利益が出たら、その一部を吐き出すのは当然だ
―とする考えが韓国の〝社会常識〟になっている。

その延長線上に、海外デリバティブ投資で損失が出たら、仲介した銀行か政府が損失補填をすべきだとの主張が出てくるのだろう。

来年上半期中に、香港ハンセン指数の連動証券(ELS)の大規模損失が現実になると予想される。
既に、銀行か政府による損失補填を要求するデモや集会が行われている。

ELSは満期時期(通常は購入から3年後)に指数が買い取り時点を上回っていれば収益を得るが、下回っていればそのまま損失になる。

・「危険な金融商品の販売を許可した政府の責任は重い」
株式売買と基本は同じだが、途中解約も延長もできない。元金がゼロになるタイプもある。
それを承知で投資したはずだが、ハンセン指数が2021年2月をピークに下落を続け、23年11月には半分になると、話は変わった。

「銀行にだまされて買った」「危険な金融商品の販売を許可している政府の責任は重い」との声だ。

来年上半期に満期が来る韓国人の投資額は8兆4100億ウォン(約9599億円)とされる。
もとより、海外デリバティブに手を出す韓国人とは、大部分が有数の金融資産家であり、投資慣れした人々だ。が、
大損が見えてくると、「金融知識がない高齢者の老後資金がすべて失われようとしている」となるのだ。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権も、年利4%超の金利で銀行融資を受けた小規模事業者に、
1年間に払った利子の一部を銀行からキャッシュバックさせるという変種の徳政令を実施している。

「銀行は高金利のおかげで儲けているのだから、少し返してあげなさい」という〝温かい心〟のなせるわざだ。
だから、「われわれにも補填を」と突っ込みやすい。

来年4月の国会議員選挙を控えて、尹政権に「それは自己責任だ」と無視を決め込む度胸があるかどうか。
「韓国型自由主義経済」の将来を見通す材料だ。 (ジャーナリスト)
室谷克実

2023.12/28 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20231228-DM5KBOJWDVJSTDVFDMTZ2VABOM/