日本のアダルトビデオ(AV)界に一人の香港人女性が飛び込んだ。性に関して保守的とされる香港で波紋が広がる。
中国の統制が強まり、閉塞(へいそく)感が漂う香港社会で、若い女性たちは「新しい世界への挑戦」として、
その生き方を好意的に受け止めている。

「相当な批判を受ける覚悟をしていたけど、多くの若い女性が交流サイト(SNS)などで応援のメッセージをくれている。
デビュー前には想像もしていなかった」。素海琳(そ・かいりん、英語名エレナ・ソウ)さん(26)は驚きを隠さない。

性に関する問題をタブー視する伝統的な価値観を持つ人が少なくない香港で、エレナさんのデビューは〝一大事件〟。
新聞各紙は大きく扱った。性の商品化や女性搾取につながるとの批判も一部で起きたが、
エレナさんには「自分のやりたい道を突き進む姿に勇気をもらった」と支持の声が多く届いた。


以前から芸能活動をしていたエレナさんは新型コロナウイルス禍で行き詰まりを感じた。「何か大きなことがしたい」
との思いが抑えきれず、日本のAVへの出演を目指した。数十社に断られたが、
台湾の会社を通じ大手プロダクションとの契約にこぎ着けた。

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インタビューに答える素海琳(英語名エレナ・ソウ)さん(共同)

ジェンダー問題に詳しい嶺南大(香港)のアニー・チャン准教授は支持が広がる背景には、2019年の反政府デモなどを経て
醸成された香港人意識の高まりが影響していると指摘。
「同じ香港人が競争の激しい日本のAV界で活躍することは『すごい』と受け止められている」と分析する。

中国指導部は香港のデモを受け「愛国者による香港統治」を掲げ、香港の民主派を強制的に排除した。

「私のことを見て、多くの人が批判を恐れずにさまざまなことに挑戦してくれたらうれしい」と話すエレナさん。
既存の価値観に挑む姿は、挫折感を味わう香港でことさらまぶしく映る。 (共同)

■香港人意識 
自身を中国本土の中国人と異なる「香港人」と認識すること。
香港が中国に返還された1997年の香港大の調査では、香港市民の35%が「自分は香港人」と回答。
北京五輪が開かれた2008年には「中国人」との回答が全体の39%に達し「香港人」を上回った。
習近平指導部発足後、香港への統制が強まるにつれて若者の中国離れが加速。
民主化を求めた14年の大規模デモ「雨傘運動」をきっかけに香港人意識が高まり、
19年には「広義の香港人」と考える若者が9割を超えた。 (共同)

2024.1/17 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240117-ADUZEGRXHJNNTINCTT5ZX4TCDA/