AV業界で初めて「潮吹き」というジャンルを確立し、四半世紀以上にわたり第一線で活躍したカリスマAV男優・加藤鷹さん。
総出演本数は1万5000本を超え、抜群の知名度を誇ったが、2013年に突如引退。
現在は台湾の成人向けコンテンツ配信サービスSWAG(スワッグ)と契約を結び、アドバイザー兼プロデューサーとして活動中だ。

「実は現役時代からいろいろお話はあって。2000年ごろはまだ海賊版が多く、それが香港や中国本土や台湾に流れて
皆が見てくれたみたいで。だから今も先生って呼ばれて歓待されるし、
中国版X(旧ツイッター)『微博(ウェイボー)』のフォロワー数も150万人近くいますよ」

 加藤さんの代表作であるHow To Sex本「秘技伝授」シリーズの海賊版は大きな話題を呼び、人気はアジア圏に一気に広がった。
その認知度の高さを生かして海外に打って出たい加藤さんと、アダルト大国ニッポンの市場を獲得したいSWAG側の思惑が合致した。

「数年前にアダルト配信サイトができて、AV撮影も解禁されたものの、コロナ禍で撮影自体もままならない。
そこでライブチャットを始めたところ、それがユーザーのニーズにハマって大バズリ。
今では台北101のある経済区・信義にオフィスを構える超一流企業ですよ」

■厳しすぎる外部からの締め付け
 35歳の若手社長が率いるSWAGは、20代の若手社員を中心に完璧ともいえる配信のシステムとセキュリティーを構築したが、
AV撮影自体のノウハウについては決してレベルが高いとは言えないのが実情だという。

「例えば、撮影時にシャワーのないスタジオを用意してしまうとか、現場でのスキルはまだ初歩中の初歩です。
でも、日本のAVに負けないような作品を作りたいという思いは強いし、ネット時代の会社なので、発信能力の高さは強みですよね」

 加藤さんは、SWAGとの契約に先立ち、19年ごろに令和版「秘技伝授」的なHow To Sex企画の配信作品の制作を進めていた。

 しかし、著作権保護を行うIPPA(知的財産振興協会)から、ライブ配信であれば問題ないが、作品として販売するのはNGが出され、
頓挫したこともあったという。

「IPPAはもちろん、AV新法(AV出演被害防止・救済法)もしかりですが、外部からの締め付けが強すぎるんです。
海外であれば、もっと自由に作品を制作することができるし、配信サービスを利用して、世界中に進出できる可能性もあります。
海外に市場があれば、そこに行くのは人として当然ですよね」

 少子高齢化が進む日本の市場は今後更に先細りすることも予想される。引退決意に際してそれらの影響もあったのか。

「秋田で日立という大手電機メーカーにいた時も、秋田ビューホテルに転職した時も、田舎を捨てて上京して、
たまたま出合ったAV業界に足を突っ込んだ時も、自分の中では同じ一本の線路で。要は電車を乗り換える時期だったということです。
俺のことを先見の明があるなんて言う人もいるけど、自分が今何をすべきかを常に理解し、行動してきた自負があります」

 そんな一本筋の通った人生を歩んできた加藤さんにとっても大きな転機となったのが、11年、東日本大震災の年の父の死だった。

「元々警察官で、引退後は行政書士の仕事をしたり頑固で真面目な父親だったんですけど、
晩年は毎日テレビの前に座ってお茶飲んで、ご飯食べて寝て……の繰り返しで」

 そんな姿を見て、このまま続けてていいのか、やり残したことはないかと自問自答したという。

「それに、AV業界でセカンドキャリアで成功した人って誰かいます? いないんですよ。だからこそ俺は、
80年代の日本AV黎明期のような今の台湾で、その歴史を知る者として役に立ちたいし、ぜひ俺を利用してください、という思いですね」

 “今はとにかくSWAGをデカくしたい”と熱く語る加藤さんの目は、「秘技伝授」のジャケット写真のような
強い意志と輝きに満ちあふれていた。

(取材・文=杉田俊人)
公開日:2024/01/22 06:00 更新日:2024/01/22 06:00
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