世界で性の多様性への理解が進む中、中国でLGBTQなど性的少数者を施設に送り込み「転向療法」と称して
殴打するなどの虐待が横行していることが11日、分かった。被害者らが暴力の実態を証言した。
保守的な考えに基づく偏見に加え、性的少数者の権利擁護を「西側の価値観」と警戒する
習近平指導部の姿勢が性差別に拍車をかけている。

被害者や支援者らによると、転向療法を行う病院や民間施設は、上海市や河北、湖北、四川各省などに100カ所近く点在。
入所者の多くが家族に半強制的に連行された10~20代の若者で、施設から抜け出せた場合でも
警察当局が関与し連れ戻されるケースが相次いでいるという。

「おまえなど気持ち悪くて役立たずだ」。性的指向や性自認の「矯正」を行う施設で、指導官が入所者を殴打したり
人前で裸にさせたりした。性的虐待の被害もあった。

施設では外部との連絡を制限するためスマートフォンやパソコンを没収される。
髪は短く切られ、軍隊のような厳しい訓練のほか「男性は働き女性は子を産む」といった伝統的な性別役割の授業を受けさせられる。

中国で同性愛はかつて精神疾患と見なされ電気ショックなどの「矯正」治療が国際人権団体から問題視されてきた。
近年は性的少数者が米欧の価値観の浸透に神経をとがらせる習指導部による政治的迫害の対象となりつつある。

昨年5月には性的少数者の権利擁護に取り組む団体「北京LGBTセンター」が活動停止に追い込まれた。
人権活動が反政府運動につながりかねないとの当局の警戒感が背景にありそうだ。

中国のLGBT人口は7500万人との推計がある。
中国の支援団体の関係者は「被害者は数千人規模とみられるが、正確な人数は分からない」と指摘した。(共同)

日刊スポーツ [2024年2月11日20時24分]
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