対馬に生息する国天然記念物ツシマヤマネコを交通事故から守ろうと、対馬市は3月から、環境省などの協力を得て、島内の国道と県道の計5か所の路面に「ヤマネコ注意」と表示している。環境省対馬野生生物保護センターも、写真やイラスト付きの看板を道路沿いに設置しており、希少種が輪禍に遭わないように、島ぐるみで取り組む。(島居義人)

 ツシマヤマネコの生息数は推定約100匹。環境省のレッドリストでは、野生での絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧IA類」となっている。同センターによると、1992年度以降、車の事故で死んだヤマネコは累計132匹(2月17日現在)に上り、個体数が減少する要因の一つになっている。

 これまで「ヤマネコ注意」の路面表示は、上県町田ノ浜地区の道路に1か所あるだけだった。ヤマネコの交通事故が約8割発生している国道と県道にはなかったため、新たに表示することにした。

 過去に交通事故が多発し、今後も発生が予想される道路として、同センターが上島で3か所、下島で2か所を選定。同市は3月、道路を管理する県や警察などの協力も得て、ヤマネコの保護などに関する「ツシマヤマネコ基金」を活用して路面に表示した。

 同市自然共生課の神宮周作係長は「事故が1件でも減ることを願っている。島外から訪れて運転する人もいるので、路面表示がヤマネコの島をアピールするメッセージとして届いてくれれば」と期待する。

 同センターによると、表示されたうちの美津島町大船越―久須保間の国道約1キロでは、道路に飛び出すヤマネコの姿が確認されているという。このため、同センターは同区間の道路沿いに、ヤマネコの写真やイラスト付きの看板を設置。韓国人旅行客にも伝わるよう、ハングルを併記している。

 同センターの柴原崇・首席自然保護官は「注意喚起の表示をした区間は、過去に交通事故などが起きた場所。表示を見たら速度を控え、安全運転を心がけてほしい」と呼びかけている。

https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/03/20240313-OYTNI50055-T.jpg
https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/03/20240313-OYTNI50056-1.jpg


読売新聞 2024/03/14 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20240313-OYTNT50124/