ロシア大統領選は15~17日に投票が行われ、ウラジーミル・プーチン大統領が87・28%の得票率で圧勝した。
投票率は77・44%だった。旧ソビエト連邦崩壊以降のロシアの大統領選で得票率、投票率ともに最高だったとしている。

事前に投票率70%、得票率80%という「目標」が示されたようなので、この数字には驚かなかったが、
やはり手段を選ばずに達成されたようだ。

もちろん欧米からは「公正な選挙ではない」という批判が相次いでいる。例えば、対立候補は、決して10%以上の票は取らない、
プーチン大統領の「かませ犬」だった。
得票率も、各地方にはノルマが課されていたのか、投票すると豪華景品という「エサ」もあった。

ただし、一部の地域では、投票所への放火や、反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏死亡に対する抗議行動もあった。

プーチン政権は、軍事侵攻によって一方的に併合を宣言したウクライナ東部や南部の4つの州でも、
ロシアの「大統領選」を強行した。
これに対し、日本や米国など55カ国は共同声明で「国際法上、何の効力も持たない」としてロシアを非難した。

25年間にわたってロシアを支配してきたプーチン氏は、大統領として通算5期目に入り、
新たな任期は2030年までの6年間となる。

習近平国家主席の中国、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の北朝鮮と、
日本の北西部には、専制・独裁国家が控えているという事実をあらためて認識しておく必要がある。
国際政治の中で唯一の理論とされる民主的平和論からみると、専制・独裁国家の周りの戦争確率は高い。

これに対抗するには、今の日米同盟に加えて、英国とオーストラリアとの準同盟を同盟に格上げするか、
いっそのこと、米国、英国、オーストラリアの3カ国による安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に加入するしかない。

その一方で、中国とロシア、北朝鮮が相互に協力しないように楔(くさび)を打ち込むのがいい。
最もくみしやすいのが北朝鮮だ。ただし、日本との間では拉致問題があるので、その完全解決が前提になる。

11月の米大統領選の結果、ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲けば、北朝鮮の切り崩しも選択肢の一つになるかもしれない。

次には極東には手が回らないロシアだ。
安倍晋三元首相は、日本として、中露北の三正面作戦は無理とみて、ロシアの懐柔に出ていった。
今のウクライナ侵攻問題がない時だったこともあり、西側諸国とは基本は同調路線であるが、
個別問題では是々非々という態度だった。これを復活させるのも一案だ。
スウェーデン、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟でバルト海を封じられたロシアは
極東重視になるかもしれないので、日本にも勝機はある。

いずれにしても、対ロシアだけを考えるのではなく、極東アジア全体を俯瞰(ふかん)した視点で戦略を考える必要がある。
 (元内閣参事官・嘉悦大教授)

2024.3/23 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240323-T4YSNMX22FOVRK5VHSDUGYNG5A/