再生可能エネルギー導入に向けた規制の見直しを目指す内閣府のタスクフォース(特別作業班)で、
民間構成員が提出した資料の一部に、中国の国営企業のロゴマークが入っていたことが問題になっている。

プレゼンテーションソフトの「パワーポイント」を使う人なら、「透かし」を入れることもあるだろう。
自分で入れないなら、誰かのパワーポイント資料をもらってそれを流用したりすると「透かし」が入ることもある。

内閣府はX(旧ツイッター)の投稿で「(民間構成員が所属する)自然エネルギー財団と
中国政府・企業とは人的・資本的な関係はない」とするが、匿名で背景情報を追加する機能「コミュニティノート」では
「同団体には中国政府が強く関与している」とされている。

筆者はXで「(いろいろな)関係が透けて見えるな」と投稿した。
それに続けて「一般論として、第三者のデータをぱくってそのまま資料にする人は、
専門家でないので、政府の審議会の委員にしてはいけない。
それに加えてセキュリティクリアランスの観点からも内閣府はお粗末」とした。

さらに、件の資料は削除されていたが、「【LIVE配信】第30回 再生可能エネルギー等に関する規制等の
総点検タスクフォース」を見たので、「なんか右下にはあの企業のロゴもあるなあ。わかりやすいな」とも投稿した。
役所の審議会などには筆者も呼ばれることがよくあるが、オンラインで「zoom」を使っているのは珍しい。

さらに、「件の人(民間構成員)は、経産省や金融庁も呼んでいるので、霞が関審議会への浸透は相当なもの。
政策決定の影響力を懸念するというより、審議会は隠れ蓑なので権威づけに呼ぶという政府そのものの姿勢が問題」と投稿した。

この問題の背景には、財団がアジア各地の豊富な自然エネルギー資源を相互に活用しあう「アジア・スーパー・グリッド
(ASG)」構想を推進し、ASG構想の世界版であるGEIDCOという国際送電ネットワーク構築を目指す団体に
理事メンバーとして参加していたことがある。ASG構想は中国主導で、日本の安全保障にも大きく関わるものだ。

この問題は、25日の参院予算委員会で日本維新の会の音喜多駿氏が取り上げ、民間構成員の任命経緯などを質問した。
ロゴマークが入っていたことが問題なのではなく、中国企業との関係が問題だとの正論を述べていた。

本国会では、同じ内閣府から経済安全保障分野におけるセキュリティー・クリアランス(適格性評価)制度の
創設に向けた法案も提出されているが、同法案では、政府高官がチェック対象から抜けているとの指摘もある。

さらに政府の審議会などに提出された資料が、中国企業の影響を受けていた恐れがあるとなると、
中国の静かなる侵略(サイレント・インベージョン)がここまで来ているのかと驚かざるを得ない。
政府全体として、安全保障体制の総点検が必要だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

2024.3/29 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240329-6HGMHUJQWRLY7PKUR4J4HXPS7U/