レビュー対象商品: 伊月の戦争―終わる世界の物語 (集英社スーパーダッシュ文庫) (文庫)

1章だけは面白いです。
2章以降は「あれ?戦争とか日本とかの設定どうでもよくね?」な感じでストーリーが細っていきますw

主人公である伊月が主人公らしくなく、主役不在の群像劇という印象が強いです。
全体的に会話シーンが長ったらしく、本来前フリで説明すべき世界観や状況説明に支障をきたしており
それら設定のスッポ抜けが最後まで説明されず、勢いだけで最後まで走りきった感じです。
作者側の脳内設定が読む側にも伝わってるとか思ってそう。

また、会話の掛け合いでストーリーが進んでいくのに、登場人物に魅力が無いのがどうしようもない。
例えば主人公の容姿ひとつ取ってみても、作中いきなり唐突も無くお風呂シーンが出てくるくらいで
これもキャラクターを掘り下げるというより「狙って書いた」感がダメっぽさを加速させています。
それ以外の主要人物も髪型・髪色以外のもの(例えば身長・体格だったり声の高低だったり)は描写されておらず
これらが結果的に読む側の感情移入を阻んでしまっているのが残念です。

仮にも新人賞が取れる人材なら、なにかこうキラリと光る物があるはずなのですが
ストーリー展開もありきたりで、あっと思わせるような伏線や発想の転換なども見られず
私には作者の才能の片鱗、あるいは野心のようなものを全く感じられませんでした。
むしろキャラクターありき、書きたいシーンありきで進む物語という作者側の思惑だけが透けて見え、
とりあえず読めるようにしてみました感がすごいです。

挿絵の絵柄が個人的に好みなので★1個、小説としての評価は0点です。