まだ夏の気怠さを残した九月の頃
酒井は、部屋の時計を見ながら、何をするというわけでもなく、そわそわとしていた

同僚の木村の提案から始まった久しぶりの食事会。とても楽しみではあったが、それだけではなかった
それは、その食事会のメンバーの中に、あの“菅沼”がいることである。喧嘩別れをして疎遠になってしまった同僚
もちろん、それが木村の気遣いであることは分かっていたし、菅沼に対する怒りも既になかった
だがそれでも、また以前のような関係に戻れるのかと思うと、どうしても不安になってしまう

酒井がそうこう考えているうちに、時間はあっという間にお昼三時半になり、ビルの呼び鈴が鳴った


時間通りにやってきた同僚を迎える為に門を開けると、聞いていた通り、そこには木村、菅沼、濱崎、宇野の四人が立っていた
菅沼の手には、筒状の竹を半分にカットしたようなものがあり、宣は、両手から溢れる程の量のそうめん袋を抱えていた
それを見てすぐに何をするのか分かった酒井であったが、先に木村が口を開いた

「ちょっと季節外れだし、お前はラーメン派かもしれないけど、流しそうめんをやろう」
急ではあったが、木村の心遣いはすぐに伝わった。確かに、ただ座って食事をするよりこうしたほうが、菅沼と仲直りしやすいかもしれない

「まーじか。いや、全然いいよ?夏っぽいもんね。俺すげー嬉しいよ」
「じゃあ、“開門”だな」
「え?」

その瞬間だった。力丸は手に持った竹筒を粉砕し、酒井の口に両手を入れ無理矢理に開門した

「んっ!いきなりっ!やめろ!菅沼!」

「濱崎!やれ!」

木村の合図で、濱崎は大量のそうめんを酒井の口に流し込んだ

「んっ!んっ!んっ!んっ!」

大量のそうめんが、酒井の食道から、胃、腸を通過し、肛門に流れ溢れ出した
そのそうめんを、“門”の傍で口を開けて待ち構える宇野が一気に吸い尽くす

「宇野!味はどうだ?」
「ほろ苦だね」

「味気なくなったらトコロテンを食べるといいぞ。やれ!菅沼 !」
ズンッ
「アイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」

酒井が放出する心太を一気にすする宇野

「宇野!味はどうだ?」
「ほろ苦だね」


汗を流しながら指示を繰り出す木村
途中から心太製造に夢中になる菅沼
その光景をひたすら笑いながら眺め、自分は一切口にしない濱崎
持ち前の耐久力でひたすらに食べ続ける宇野

こうして、酒井を使った“特製流しそうめん”の会は大成功を修め、その日の夜中三時半まで続いたという