「んっ!木村!アイデアが産まれる!!」
「ハイ!!!!!」

「!」
「どう?木村!」
「…駄目です。今回も"予算オーバー"です。」
「………そうか」


幾度とない残業により、何度もユーザーの為の企画を模索した酒井。
しかし、体を労らない過剰な労働によって酒井は遅刻を繰り返した。
上司の叱責が酒井の弱った心に激突した衝撃で溜め込んでいたストレスや疲労が、
血液と胃液に包まれて口から流れ出てきた。
グチャグチャの苦悩が無造作に混在するそれは、"嘔吐"というよりは、まるで"もんじゃ"であった。
幾度目の残業を終えた酒井は、おもむろに"もんじゃ"をかき集め、
両手で掬い、傍にあったバケツに入れていく。
そして、トイレにバケツを傾けた。
自身の情けなさの苛立ちが立ち込める。

「頑張ろう、木村」

決意と覚悟を兼ねた握手の後、"社員"に指示を飛ばす酒井。
責任を全うする酒井の勇ましい姿に、木村は涙が収まらなかったという。