>>304
私が長い間、試みることを念願していた「Autographを1000名収容可能なホールの舞台に設置し鳴らしたらどうなるか?」
この経験を10年ほど前に偶然得た。
細君のピアノ講師達による演奏会に仕方なく着いていったのだが、そのホールの両袖に、Autograph程の大きさのエレクトロヴォイスのスピーカーシステムが設置されていたのである。
演奏会が終了し、客が全員ホールを出た後(私はその間スピーカーシステムを見ていた)、私がホール後方中央で舞台を見ていた時、偶然エレクトロヴォイスからボリュームは小さかったがオーケストラ曲が鳴ったのである。
私が「生音の50%はホールの音だと確信した瞬間」でしたね。

「生の音つったって音波に過ぎないんだから、出すことは可能よ。それは絶対に可能よ。
然しだねえ、生の音を機械で聞かせる為には、生の音を聞かせる為のメカニズムってえものが必要ですよ。
その為には、あるホールをこしらえてだねえ、スピーカーシステムを舞台のある一定の位置に設置し、聞く人間をある位置に座らせ、ある方向に向かせなきゃあならんでしょ?
そして、これはステレオではない、生の音だというサイコロジーも必要。そうすりゃあ出来ますよ」(小林秀雄)

アコースティック楽器の生の音を100%拾える「神のマイク」は存在しないのでこの話の50%は同意しないが、その時、聞いたエレクトロヴォイスの音はまさしくホール後方中央で聞くオーケストラの音を想わせたのは確かなのだ。

音の80%は録音で決まり、音の80%はスピーカーシステムで決まり、音の80%は部屋で決まる。矛盾しているがそう思っている。
念願叶い、ピアノ講師達の詰まらぬ演奏に耐えた甲斐があった。