演歌でブルースという用語が大切にされているが
いわゆるシカゴ・ブルース、デルタ・ブルースのような
弾き語りを中心にした黒人ブルースとは大きく違う。
戦前のジャズバンドをバックにした歌唱がそのまま使われた。

とはいえ両者に共通するのは
黒人が抱えた言語的な感情表現の違和感だろうと思う。
ラッパ吹き込み時代のラグバンドの録音を聴くと
ドモリと同じような感じで、それをやや滑稽にデフォルメしている。
つまり言いたいことが伝わらないもどかしさを
感情的な言い回しで何とか伝えようという
衝動的な嗚咽のようなものである。

普通に話せば何てことないことでも
演歌で歌うと心のこもった感じに聞こえる。
実際には、こんなことを大っぴらに話すことは
恥ずかしくてとてもできない。
だからブルースと呼んでおこう。