人はなにかとんでもない勘違いをするようになっているのではないか。
人も他の動物と同じように群れを成して生活している。
しかし、群れを成して生活することと、畜群として管理されることは違う。
畜群として管理されている動物は、家畜である。
群れで生活している動物は、自らに迫りくる危険を察知するように
それぞれが自ら警戒していて、そのことが群れ全体の安全確保にもつながる。

家畜は、管理をする牧夫に守られて誘導に従って生活している。
危険を察知することは管理する牧夫や牧夫を主人とする飼い犬の役割であり、
畜群の個体は、棒で突かれたり、犬に吠えたてられたりするのを避けるように
委縮した行動をとることによって、都合よく群れとして安全管理されている。
では、人の群れは、そのように管理された畜群なのか、それとも人として
の野生の群れなのか。

人には、人以外の群れを管理する牧夫やその飼い犬がいるわけではない。
であるとするなら、群れの安全管理は、誰に任せることができるのか。
あたかも、群れ全体の安全管理のための判断を信頼して任せることが
できる牧夫や、その飼い犬が存在するかのように錯覚して、誘導される
群れに委縮しながら従っていれば、群れ全体も、自らもより安全に
生活できるはずだと、何の根拠もなく思い込んでいるのではないか。
人の群れは、群れのなかで生活するそれぞれが自らに迫る危険に
個々に警戒するということを怠るようになり、単に誘導に従うこと
によって群れ全体もより大きな危険に晒すことになっている可能性さえ
考えられなくなっているのではないか。