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大乗仏教の思想体系の理論的建設者であるナーガールジュナは、慈悲に三種類あることを認め、無縁の慈悲の究極者的性格を明らかにしていう。
・・・恐らく現実の社会において、多くの個人と個人とが対立している場面を意識しつつ慈悲を及ぼすことが「衆生を縁とする慈悲」であり、
個人存在或いはそれを関連がある諸種の物を個別的な要素に分析して、それらは独立な実体でないと思って、
執着を去って他人に何らかの物を与えて奉仕すること、すなわち小乗仏教における慈悲行、が「法を縁とする慈悲」であり、
諸法実相である空(=如来)を観じて行う慈悲が「無縁の慈悲」なのであろう。P112-116

慈悲 中村元 講談社学術文庫 ISBN:4062920220
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