仏教が成熟させた逆説は、果たして釈迦の時代からあったのは、
まさに大乗仏教の空において成熟した。

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ところで智慧と慈悲との関係はどうであるのか。
普通大乗仏教で考えられていることは、まずさとり(根本知)を得て、
それから慈悲のはたらき(後得知)がはたらくというのであるが、
ナーガールジュナは正反対の主張を大乗経典の中から引用していることがある。
先ず、慈悲心があるからこそ、さとりが得られるのだという。
「菩薩は、衆生の中に処して三十二種の悲(あわれみ)を(観音菩薩のごとく)行い、
漸々増広して転じて大悲を成ず。大悲はこれ一切の諸仏・菩薩の功徳の根本なり。
これは般若波羅密の母なり。諸仏の祖母なり。菩薩は大悲心を以ての故に、般若波羅密を得。
般若波羅密を得るが故に、仏となることを得。」(大智度論)P7
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