数学の説明は手続きを記述するだけになっていて、その手続きをなんのために
行うのかという意図の説明ができていない場合がとても多い。意図が不明な
まま、最終的にご褒美がもらえるから手続きに従いますというのでは、芸を
仕込まれる犬と変わらない。数式の操作に説明されるべき意図などないと
考えている数学者も少なからずいる。それは、自らが言葉で表現する能力が
ないことを、操作に意図がないことと混同しているだけだ。足し算や引き算で
数式の項を消すような単純な操作であっても、消さずに残した項の関係性を
独立に表現するという意図がある。当たり前すぎて言葉で表現するまでもない
と考えられている操作でも、言葉で表現してみるなら、今まで気づかなかった
操作の意味に気づくこともある。