以下、根井雅弘『経済学の教養』(20~1頁,2006年より)
【コラム3】利潤決定の命題

 カレツキは、利潤決定の命題(利潤P=投資I十資本家の消費C)を、
マルクスの再生産表式をヒントに次のように導き出し ました。
まず、経済を三つの部門(投資財を生産する第1部門、資本家の消費財を生産する第 II部門、
労働者の消費財を生産する第III部門)に分けて考えましょう。各部門の生産物の価値が、
不変資本c、可変資本v、および剰余価値mの和に等しいことはマルクス経済学の
ABC(基本)ですが(以下では、各部門のc、v、mを表わすために下に数字を添えます)、カレツキ
は労働者はその所得(v1+v2+v3)をすべて消費する(c3+v3+m3)と仮定しているので、
v1+v2=c3+m3という関係が得られます。この関係を利用すると、粗利潤c+mの総計
(m1+m2+m3+c1+c2+c3)は、第I部門と第II部門の生産物の価値の合計
(c1+v1+m1+c2+v2+m2)に等しくなります。
すなわち、利潤P=投資I十資本家の消費Cと同じ命題が得られるのです。