「犬は動物だ」vs「犬は動物じゃない」
ちょっと待てよ?動物という言葉の意味は複数あるんじゃないか?
ということで2つの命題の動物の意味を検討してみよう
動物という言葉の意味には生物学的な意味と道徳的な意味がある
前者は多細胞で、従属栄養生物で、好気呼吸を行う生物という意味である
後者は社会性がなく、欲望に忠実で、理性的ではないものという意味である
テクストを解釈するときにはそのテクストが最も合理的な意味を示すように解釈するという慣習に従って、2つの命題を見てみよう
前者の命題は2通りに解釈できる
すなわち、犬は生物学的意味で動物であるとも読めるし、犬は道徳的意味で動物であるとも読める
後者の命題を見てみよう
犬は生物学的意味で動物であると解釈したとき、この命題は合理的だろうか?
しかし犬は経験的に明らかに多細胞、従属栄養、好気呼吸な生物なので生物学的意味の動物の意味からしてとても合理的な命題とは言えないので一旦保留しよう
次に道徳的意味で動物だと解釈してみよう
すると犬は経験的に飼い主に対して愛情を示しているように見えるし、飼い主を喜ばせるような行動を見せることもあって、社会性があるように思える
さらに犬は欲望を抑えてエサを食べるのを我慢することもできるし、飼い主が泣いているときに慰めるような行動をするのは理性的なように思える
するとこの解釈では「犬は動物ではない」という命題は十分合理的な命題と見て良さそうなので、この解釈を採用する
ここで一見対立していたように見えた2命題に戻り、「犬は生物学的意味で動物である」vs「犬は道徳的意味で動物ではない」と解釈した場合、そもそも2つの命題は対立していなかったことになる
するとこの2つの命題を総合して「犬は生物学的意味では動物であるが、道徳的意味では動物ではない」という新たな命題が生まれる
このような対立する命題を最大に合理的に解釈し、さらに対立を避けて総合することが止揚ではないだろうか