会場に入って、驚くとともにショックを受けた。トランプ集会の取材はこれで7回目だが、以前に比べて若い人が目立つ。「トランプ支持者は、白人の高齢者」という過去の支持者像は消え、白人がほとんどだが半分は20〜30代ぐらいだ。アリーナの席は約2500人の支持者ですぐに埋まり、午後7時にトランプ氏が到着するのをワクワクしながら待っている。

大学生と思われる男性4人の隣に座り、話を聞こうかと思ったが、過去の経験から思いとどまった。トランプ氏が演説を始め、「フェイク・ニュース!メディアは、人々の敵だ!」と批判すると、一斉にブーイングが起こり、会場中心部にある鉄柵で囲まれたメディアプールに中指を突き立てたり、スマホで撮影したりするのを記憶していたためだ。

判断は間違っていなかった。トランプ氏を待つ間、会場でウエーブが起きた。歓声を上げながら両腕を上げる隣の男性が「おい、プレス!」と2度叫んだ。ウエーブに参加しないことをなじっているのだ。記者だと名乗っていなくてよかった。ノートもバッグにしまった。

米南部に殺到し増え続ける移民も、トランプ支持者が蛇蝎のごとく嫌う。トランプ氏は、内ポケットから折り畳んだ紙を出し、「蛇の話を知っているか?」と読み始めた。
 
「優しい心を持った老婦人が、道端で凍えている蛇を見つけた。『優しいおばあさん、お願いだから助けて』と蛇が言う。おばあさんは蛇を温かく包んで家に入れ、暖炉の近くに置いて、ミルクとハニーをやった。

おばあさんが夜、仕事から戻ると、蛇は回復していた。おばあさんは蛇を胸に抱き、美しい鱗をさすってやりキスした。蛇はお礼も言わずに、彼女にかみついた。『救ってあげたのになぜ?あなたは毒蛇で、私は死んでしまうわ』とすすり泣くおばあさん。『黙れ、愚かな女。連れて帰る前に、俺が蛇だと知っていたくせに』と蛇はニヤリとしながら言った」

会場からは「オーー!」という怒りと失望が混じった声が漏れ