安楽亭が焼肉食べ放題チェーンで“一人負け”のワケ。客単価で「1000円以上の差」が

 焼肉店の安楽亭の業績が回復しません。2023年3月期に5億7100万円の営業損失を見込んでいます。一方、焼肉きんぐを運営する物語コーポレーションは、2023年6月期上半期に34億8300万円、あみやき亭は2023年3月期に4億2200万円の営業利益をそれぞれ出しました。
 安楽亭、焼肉きんぐ、あみやき亭はどれも郊外型のロードサイド店を得意とするブランド。安楽亭だけが黒字化できないのはなぜでしょうか?

◆エネルギー価格高騰の影響を受けたというが…
 安楽亭はもともと、2023年3月期に4億200万円の営業利益を予想していました。しかし、2022年11月10日に業績予想の下方修正を発表。一転して赤字予想へと切り替えました。フォルクスなどを運営するアークミールを子会社化していますが、安楽亭事業単体で見ても、黒字化はできていません。

 新型コロナウイルス感染拡大の第7波で客数が減少したこと、急激な原材料、エネルギーコストの高騰を下方修正の理由に挙げています。

◆なぜ安楽亭だけが苦戦しているのか?

 しかし、それは焼肉きんぐ、あみやき亭も同じ。3社ともに日本の会計基準を採用しており、営業利益には営業外損益は含まれません。つまり、条件は各社同じにも関わらず、安楽亭だけが苦戦しているのです。

 苦戦の要因は2つあると考えられます。1つ目は競合他社と比較して客単価が低く、客数の落ち込みをカバーできないこと。もう1つは経営合理化を進められず、販管費が重くなっていることです。

◆客単価で「1000円以上の差」が

 安楽亭の2022年3月期の客単価は1896円でした。物語コーポレーションは焼肉きんぐの客単価を公表していませんが、FCオーナー向けのセミナーやインタビューなどから、3000円程度であることがわかります。2つの焼肉店では1000円の開きがあるのです。

 1店舗当たりの年商が1億2000万円で利益が出ると仮定して、必要な客数を計算してみましょう。この店舗が1ヶ月当たり30日稼働する場合、単価3000円で目標達成に必要な客数は1日当たり111人。平均組人数が3.5人だったとすると、32組が来店すると達成することになります。

 これが単価1800円の場合、必要な人数は185人。53組の来店が必要です。ロードサイド型の大型焼肉店は100席程度あるのが普通。焼肉店は回転率が1回と低いことで知られています。単価3000円であれば、1.1回で黒字化は可能です。大型店で1.8回転させるのは難易度が高いと言えるでしょう。

 客単価は付加価値の高さで決まります。つまり、顧客に美味しい、または美味しそうと思わせられるかどうかが勝負なのです。