ビルとフィルはお互いのドラミングの崇拝者同士だったとあります。

次に、ジェネシスからピーガブが脱退して代わりのヴォーカルのオーディションを何十人もするものの、フィル・コリンズ以上に適切な歌手が
見つからず、サポートメンバーとしてビルが加わった顛末が書かれます。ドラマーが歌手になるなんて悪夢のシナリオであり机上の空論に思われたが、
フィルはうまくやってのけた。ビルへの給料は週給500ポンドと前例のない待遇だった。しかし・・・。

「ジェネシスでの自分は、全体的に言って無能な雇われ仕事人といったところだった。イエスやクリムゾンでは音楽の製作に通して
参加し議論することに慣れていたので、ジェネシスではとにかく手持ち無沙汰で不満だった。好きでも嫌いでもないお仕着せの曲を
覚えねばならず、どうにも馴染めないおかしな気分だった(ジェネシスの音楽は自分にはなんの関係もないとわかっていた)。
生活のため以外の動機が見出せず、気が乗らない、かつがれたような気分がして、ひどい振る舞いをするようになっていった。

自分は無駄に茶々をいれ、我を通してばかりで口を慎むことを忘れていた。それでもジェネシスは絶えず自分と妻のキャロラインに対して
丁寧で誠実な態度を貫いたが、そのことでかえってきまりがわるくなった。進んでクビになろうとしていたに違いない。が、ぎりぎりのところで
ツアーは終わった。自分にとって一文の得にもならない、また確かにそれにも値しない、自分の参加していないゴールドアルバムの宣伝と共に
(注:おそらく「トリック・オブ・ザ・テイル」)。ロンドンに戻るころには自分の人生を始めたくてたまらなかった。もう、研究は十分だ。