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■金メダルを頂いたような気持ち

吉報の電話は、偶然にも自身でとったことを明かす菊五郎。

「いつもは電話をとることもないのですが、たまたま休演日で。(電話口の方に)写メールをどうこうしてほしいと言われるのですが、私はガラケー。
まるで分かりませんので、事務の者に電話を代わってもらいました。そこから、フラッシュバックのように、先輩方の顔が浮かんできて。ありがたいことです。
オリンピックの年に、歌舞伎界の金メダルをいただいたような気持ちに。一生忘れられない年になります」

家族の反応を聞かれると、顔をほころばせた。

「女房(富司純子)が本当に一緒に喜んでくれました。コロナ禍で、私は家から出て行かないわけです。その間ずっと、食事も面倒みてくれまして。
女房のことを本当にありがたく思っています。時々私の手綱をひっぱったり緩めたり、放して遊ばしてくれたり(笑)。ただ感謝の一言です」

今月2日に誕生日を迎え、現在79歳。体力維持や健康への心がけを問われると神妙な面持ちに。

「いまだにタバコは1日40本、晩酌ではウイスキーをがぶがぶ頂いており、健康についてはあまり考えておりません(一同笑)。健康に産んでくれた親に感謝しております。
散歩をした方が良いのだろうと思っても、つい理由をつけてしまうんですね。次にやらせていただく役は、あまり痩せてはいけないな。今日は風が強いな。
雨っぽいな。散歩の途中に雨が降っちゃうんじゃないかな、とね(笑)」

そんな菊五郎だが、現在出演中の『松竹梅湯島掛額』では、溌溂とした芝居で観客を大いに楽しませている。

「日々の舞台はおろそかにせず、体をめいっぱい使いお芝居をやらせていただいています。それが少しは健康につながっているのかもしれませんね」

11月1日からは、『吉例顔見世大歌舞伎』で『寿曽我対面』に出演する。

「(十代目坂東)三津五郎の追善狂言です。面白いやつでした。かたいことを言っていると思ったら、時々ふざけたことも言う。懐かしいですね」

菊五郎は工藤左衛門祐経役を勤め、三津五郎の長男・坂東巳之助が曽我五郎役を勤める。