>>247

 歌舞伎俳優の養成の始まりは1970年。現在約300人の歌舞伎俳優がいるが、約3分の1をここの卒業生で占める。
同じ月にいくつも公演ができるのは華やかな立ち回り、脇をしっかり支える人たちの力があるから。
中村歌女之丞(64)、中村梅花(69)はともに第2期生でベテラン女形として幹部俳優に名を連ねる。梨園が決して閉鎖的でないことを証明する。

 時蔵は「2年に1度だった募集が今年から毎年に。5年、10年先の歌舞伎界を考えて。上級生、下級生ができるのも良いことでしょう」。講師陣も一流。
カリキュラムの充実ぶりに驚く。歌舞伎実技(授業回数389)、立ち回り・とんぼ(186)、化粧(70)、日本舞踊(216)など1コマ80分で計1319回もの研修を受ける。
運動が苦手でも全員とんぼ(宙返り)が切れるよう指導される。未経験者もプロになれる理由がここにある。国の支援もあり授業は無料だ。

 「ここを出ても一生修業ですが、彼らが育って一緒に舞台に立てる時がくると思うとうれしい。好きで入ってきてくれればこんなに楽しいことはないし、出演のチャンスは多い。
松竹も生活できるかどうか考えてくれているし、定年なくずっと働ける世界ですしね」。
責任を持って教えたい、と授業の準備のために台本やビデオを見直すことはしょっちゅう。「私自身の発見にもつながる。
でも一番大事なのは歌舞伎をとことん好きになってもらうこと。フランクな交流を続けていきたいと思っています」

 ◆一般家庭から梨園に入って大成した歌舞伎俳優 女形の人間国宝、坂東玉三郎(70)。生家が料亭で幼いころより舞踊に親しみ14代目守田勘弥の養子に。
親が会社経営していた片岡愛之助(48)は松竹芸能の元子役。13代目片岡仁左衛門の部屋子を経て人間国宝、片岡秀太郎(78)の養子に。
養成所ではなく、子供時代に才能を見いだされたケースだ。

 ◆前回までの応募要項の要旨 応募資格は中学卒業以上の男子で原則23歳以下。経験不問。選考方法は作文、簡単な実技、面接。研修期間は2年間。
原則、研修時間は月〜金曜の平日10時から18時まで。入ってから8か月以内に適性審査がある。遠方からの生徒には有料で宿舎の貸与あり。秋に募集開始予定。