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現在32歳。スーパー歌舞伎U『ワンピース』にはじまり、新作歌舞伎の『NARUTO−ナルト−』や『風の谷のナウシカ』などをきっかけに、
巳之助には若い世代のファンも多い。だからこそ、意識することでもあるという。

「先人が残した本を開くと、劇評を書かれた役者が劇評家の先生に抗議の電話をし、喧嘩になったなんてエピソードもしばしば目にします。
かつては名前を出して書く劇評家と、顔を出して舞台に立つ役者が、お互いの責任やプライドをもってぶつかる、健全な関係が成立していたんですね。
時代は変わり、いまはWeb媒体の数も種類も増え、ネットで検索すれば、簡単に情報が手に入る。それを元に、SNSでは誰もが匿名でも発言できるようになりました」

巳之助自身、音楽や特撮もののファンであり、「インターネットを使う世代だからこそ、ファン側の目線でその変化を感じている」のだそう。

「変化の波は、歌舞伎にも入ってきています。けれども、もし本当に歌舞伎を好きになり、知りたいことが出てきた時には、書店や図書館で本を探せば、先人の言葉にいくらでも触れていただけます。
この役者さんの一代前の方は、どんな話をしていたのだろう。さらに昔に遡ったらどうなのかな……と。それが、いい意味での“ヲタク”の楽しみ方だと思うんです」

「労力をかけて知ることを楽しめるお客様は、歌舞伎により詳しくなり、目が育ち、そのようなお客様に役者は育てていただく。歌舞伎は、それをくり返してきたと思うんです。
ですから、僕があまりお話しないのは、隠したいわけでも『お客様は知る必要はありません』というわけでもありません。
歌舞伎をもっと知りたいと思っていただけたなら、好きなだけ調べて楽しんでください。ただし僕からは教えないよ? っていうことです(笑)」