堂本正樹の「喝食抄」の中に、面白い一文がある。

平成五年一月十日(日)、品川駅で赤飯弁当を買い、高田馬場から地下鉄で矢来の九皐会へ。
喜之の「翁」と 喜正の「難波」。
(中略)
能を見ながら桟敷で弁当を食う。
客席に田村良平 (註:村上 湛) がいる。
銕仙会の合評会で、銕之丞の「重衡」を「二千円の値打ちもありません」と言い放った、早稲田のドクターコースの若者だ。
こういう人が出て、自己を詐らず見続けてくれるなら、能も安心だろう。