(>>157のつづき)

しかしながら、私自身の記憶に即して、当時の状況を述べさせて
もらうなら、羽入氏らが救助に来てくれてからその後のことは、
ほとんど記憶になく、気がついたときは、何人かの人に取り囲ま
れて、布団の上に横たわっていた。記憶をしっかりとたどり返す
ことができるのも、このときの自分からである。

羽入氏から見れば、「あんなにしっかり反応していたのだから、
記憶がないわけがない」「しらばっくれるな」と考えているのだ
ろうけれども、偽りなく、本当のことを言え、と言われるならば、
そのように言う他なかったし、今もそうである。

しかし、記憶がないからと言って、罪がないとは言えない。その
ことは、私自身が今日に至るまで、痛みとともに、ずっと自分に
言い聞かせてきたことである。

(つづく)