他人に深く関われば関わるほど、その現実感が自分の内的世界を浸食してきて、
世界観(神話)や自我(そういう形の物語)が忽ち崩されてしまう。
シンジは、他人との距離の取り方、すなわち、愛想のよい、敵意のない態度を
振り撒きながらも、それでいてあんまり深入りしない、幅広く薄い、半ば事務的な、
利害関係を視野に入れた人間関係(フォーラム)の作り方がまるで出来ない年齢にある。
そこで、学校の、主に特別活動内で作られるような人間関係のあり方と、
会社組織内で作られていくような人間関係のあり方のギャップ
(もちろん重なる部分もたくさんある)に懊悩を抱かされる。シンジは、逐一傷ついては、
自分の殻の中に、ダンゴ虫やカタツムリ、グレーゴル・ザムザのように引きこもってしまう。
現代青年、とくにアニオタの典型だろうか。他人に深入りすれば、距離の取り方を誤れば、
それだけ互いの世界、とくに、他人に触れられたくない世界を侵し合うことになるし、
相手に弾かれ、深く傷ついてしまうことすらある。親しき中にも礼儀ありというもので、
自分のイメージを酷く落としてしまうような事を他者に暴露するからには、
それでいて、相手により肯定的で深い関係を望むのならば、よっぽど自分をありのまま
愛してくれる人間でなければならない。エヴァンゲリオンは、そういった、
信頼関係で成り立っている人間社会、とくに第二次世界の性質を反映したものである、と言えないかな。