まず、イギリスでは、ドイツではとすぐに単純比較しようとする筆者の拙劣さに読む気を削がれます。
物事にはそれがそうである理由があり、それは社会的、歴史的な背景を伴っているが故の現状であるのに、
それを踏まえずに日本はこうだ、イギリスではこうだと比較することに終始するだけで考察する気を全く感じられません。
日本はここが効率的ではない、こういうところは見習っていくべきである、というものを期待していたのですが、
日本はおかしい、と言うよりも西洋が正しいという前提をもとに論が展開されるので、世界が日本をどう見ているかというこの本の主題に全く信用が持てません。

次に、読めば読むほど筆者の日本人であることのコンプレックスがひしひしと伝わってきて憐みすら覚えます。
猿がシルクハットとスーツを着て西洋人へ追従しようとしている風刺画を思い出しました。
昔の日本人は西洋から見ればそのように見えたかもしれませんが内実は全く違います。
日本は存続、独立を望み、日本を近代化させ、対等な立場になるためにそのようにしたのであって、決して英国人や独逸人になろうとしたわけではないでしょう。
風刺画のように滑稽に見られようと、彼ら、そして今に至る日本人を通じて、今日の日本は世界に対する認識を獲得したわけであり、世界は日本に対する認識を持っているわけです。
それについて、他とは異なった認識を見てみたくて手に取ったのですが、期待はずれでした。
悪く言おうと思えば何でも悪く言える、ということがこの本から得られたことです。

この本が筆者の卑下している日本人的思考によって書かれていると言うのが最大の皮肉でした。

田舎者が都会に引っ越したことを自慢しているのを聞いたら、この本を読み終わった時の気分になれるだろうなと思います。