浅田 イスラムをめぐる宗教戦争も実際はグローバル資本主義とそれに乗り遅れた人々の闘争なんで、
政治経済学的な分析が不可欠。フランスのトマ・ピケティの『21世紀の資本(論)』が
世界的ベストセラーになったのも不思議じゃない。

ただ、原書が出たとき読んで、このタイトルはまったくの誇大広告だとわかった。
マルクスが『資本(論)』で資本主義のメカニズムを原理論的に解き明かし、
資本主義を乗り越える方向を示したのに対し、ピケティの『21世紀の資本(論)』は、
資本主義下で(戦争の時期を除き)格差が拡大する傾向にあることを統計から現象論的に実証し、
税制によるその是正を提案するだけ。その程度の本を『資本(論)』と題してベストセラーにするなんて、
ウエルベックなみのあざといメディア戦略だよ(苦笑)。

浅田 日本でも遅まきながら邦訳が出て、ピケティが宣伝のため2月に来日するらしい。
対談しないかって言われたけど、とくに興味ないな。

田中 監訳が山形浩生ですから。

浅田 あんな本だから英訳からの重訳でもいいと思うけど、
本来、みすず書房はそういう本を出す出版社じゃなかったよね。

田中康夫と浅田 彰の憂国呆談2 | ソトコト talk83
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