旅先で仕事「ワーケーション」認めます 長期休暇促す

旅先で休暇を楽しみながら仕事もこなす――
仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた「ワーケーション」が広がり始めた
休暇先での仕事を認めて確実に長期休暇を取りやすくするのが狙いだ
自治体が観光客に“職場"をレンタルするなど受け皿づくりも進む
新たな働き方として定着するか

■帰省中に会議

「休暇先から仕事に対応できて助かった」日本航空人財戦略部の中丸亜珠香さん(38)は2017年8月帰省中に広島の実家からテレビ電話で会議に出席した

長女の夏期講習の都合に合わせて帰省を計画したが1週間ほど前に会議の予定が入った
航空券は購入済み
これまでなら「休暇をやめるしかなかった」が同社が同年7月に導入したワーケーションで予定通り帰省を楽しんだ

同社の制度はデスクワークの社員らが対象
半日単位で認められ利用した日は出勤扱いとなる
仕事を持ち帰って休暇中にこなすことは禁止でやむを得ず入った仕事や休暇明けの準備などの目的で利用できる

目的は休暇を取得しやすくすることにある
同年の有給取得率は90%と15年より17ポイント増えた
神谷昌克・ワークスタイル変革推進グループ長は「休暇を確実に取得することで仕事への活力につなげられる」という

結婚式の企画運営をする「クレイジー」(東京・墨田)でウエディング事業部のトップを務める中西章仁さん(45)は同年夏ワーケーションで向かったのは米アリゾナとハワイ
合わせて約20日間滞在した
同社では会社外での勤務をパフォーマーズデーと呼びいつでも取得できる

■観光地も期待

観光地ではワーケーションに対応して作業や打ち合わせができる場所を貸し出すサービスが登場している
ITサービス企業「ソニックガーデン」(東京)のプログラマーの野本司さん(24)ら7人は昨春和歌山市で3日間過ごした
スマートフォンのアプリ開発に取り組み、1日で完成
残りの時間は海岸や洞窟で観光を楽しんだ

和歌山県は17年首都圏の企業を対象に3泊4日のワーケーション体験会を実施
働く場所として複合施設「県立情報交流センタービッグ・ユー」を無料で開放した
18年度は家族連れの体験会を計画する
田村成準・情報政策副課長は「仕事をしながら自然や食など地域の魅力を知ってもらうことが将来的な観光振興や企業誘致につながる」と期待を寄せる

テレワークに詳しい比嘉邦彦東工大教授(経営工学)は「煩雑な手続きを求めたり普段以上の成果を求めたりすれば制度があっても利用者が広がらない
あくまで休暇を取ることが目的で働き過ぎないよう会社による社員の労働時間の管理が必要だ」と話している