〈お天気コラム−1〉なぜ外れる!?梅雨の天気予報
2005年07月06日
気象キャスター・平井信行
http://www.asahi.com/special/june2005/TKY200507050165.html

http://www.asahi.com/special/june2005/image/TKY200507050181.jpg
自宅の周辺で気温の観測をしている筆者=平井さん提供

気象予報士をしていて梅雨の時期ほど仕事にやりがいがあると感じる一方で精神的にはかなり辛くなります
梅雨の時期は天気予報の当たり外れに対してのご意見が多くなります
「外れたら謝れ!」はごく一般的なご意見ですが「自然科学だから毅然(きぜん)とした態度で臨みなぜ外れたかを説明しなさい」といったありがたいご意見もあります

私は「気象キャスターネットワーク」という気象キャスターのNPO法人の代表を務めていますがことし2月にこの団体で気象キャスターコンテストを開催しました
このとき世界の気象キャスターが来日したので質問をしたところ砂漠の国でも天気予報が外れたら必ず苦情が来るといっていました そして外れたら毅然とした態度で放送するというのが世界の主流であることもわかりました

しかしここは日本で国民性も異なります
日本の天気予報が現在どの程度当たっていてどのくらい発展をしてきたのか説明しましょう

現在の天気予報の適中率は約85%です
50年ほど前は約75%ですからずいぶん進歩しました
この理由としては気象衛星ひまわりやアメダスによる観測精度の向上観測データを素早く計算するスーパーコンピューターの性能の向上さらに気象学の進歩があげられます

ただし梅雨の時期の6月は適中率が70%台まで下がります
なぜ梅雨の時期は天気予報が外れるのでしょうか
それは雨雲の動きと関係しています
普通は西から東へ流れる偏西風に乗って雨雲も東へ移動します
しかし梅雨のときはこれに梅雨前線に伴う南北の動きが加わり雨雲の消長が激しくなります
これらの要因が重なって、天気予報の当たらない季節になります

では一般の人たちはどうしたらいいかといいますと新しい気象情報で判断することが大切です
前日の夕方の予報と当日の朝の予報と状況は一変します
梅雨前線が前日の予報より北に位置し暖かく湿った空気が流れ込んでくると大雨になります
雨雲の寿命は短く西から雨雲がやってきても途中で弱まってしまうことがありますがこれまで雨の降っていなかったところで急に雨雲が発達して大雨になることもあります

今後精度を高めるには市町村の中で観測地点を増やし市町村ごとに地域を熟知した気象予報士を置ききめ細かな監視をすることが必要です
こうした態勢をとることで大雨の発生を予測し災害を未然に防ぐことも可能となるのではないかと思います
さらに市町村ごとの天気解説が聞かれるようになるともっと気象情報が身近に感じられ、防災意識も高まるのではないでしょうか
(つづく)

《筆者プロフィル》
平井信行(ひらい・のぶゆき) 気象予報士
1967年熊本生まれ
大学卒業後、日本気象協会へ
気象キャスターとしてテレビ番組に出演
NPO法人「気象キャスターネットワーク」の代表も務める 著書に「天気予報はこんなに面白い!−−天気キャスターの晴れ雨人生」(角川書店)がある