上京して二年、二十歳の夏に鈴愛は漫画家デビューを果たした。
デビュー後しばらくして連載が決まった。
二十四歳となった今、連載は三年目を迎えていた。
コミックスは四冊出ている。
アンケート結果もコミックの売上も、可もなく不可もなく、
パッとしないが、そこそこファンはついている、というのが鈴愛の現状だった。
それほどプロとして安泰というわけではない。
実際、巻を重ねるごとに、新刊の増刷がかからなくなってきていた。
鈴愛が感じているマンネリを読者も感じているのだろう。
何せ、高校卒業までの半年間の話をもう三年書いている。

「お前、マンガはうまくいっとるんか。」
宇太郎が尋ねる。
「まーな。アカンかったらここ継ごうかな。」
鈴愛はスランプや重版のことなど不安を全部ぐっと飲み込み、
平気な顔で笑った。

貴美香は鈴愛に仕事について尋ねた。
鈴愛は妙に素直な気持ちになって、仕事の苦労も不安も打ち明けた。