第14話

なつ「絵を描きたいと思う事と
  ここで生きたいと思う事は同じなんだって
  私、天陽くんから教わったんです」

天陽「そんな事、言わないよ
  絵を描きたいっていうのと便所に行きたいっていうのは
  同じだって言ったんだよ」

なつ「それをきれいに言うとそういう事でしょ?」

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神田日勝が妻・ミサ子さんへ語った言葉


日勝の思い出を胸に

ミサ子さんは日勝との日々について話してくれました。
「『なんで絵を描くの?』と尋ねたことがあるんです。
すると日勝は私の理解しやすい言葉を選んでこう言い
ました。『他の人は知らないけど、僕にとって絵を描
くことは、排泄行為なんだ。中から湧いてくるものを
出さずにはいられない』と。
ふつう、農家の昼は12時前に畑から上がって食事をし、
少し昼寝をして体を休めて1時半にはまた畑に出るの
ですが、日勝は『ちょっと……』と言って絵の前に座
ると、畑仕事を再開するのは2時になり3時になってい
きました」。その労働を補うのはいつもミサ子さん。
「でも、好きな絵を描いてさえいれば機嫌がよく、ど
んなに尻に敷かれても平気。いばらず朗らかな人でし
た」と語ってくれました。

夭逝の画家の足跡を辿って「カムイミンタラ/第113号」