>>727
だから今回の再放送でもカットされたまま放送されるものだと思っていたが、しっかりと撮り直されていた。

 瀧が当初撮影した時点から相当の時間を経ての撮り直しは、出演者やスタッフらの日程調整、舞台セット、経費の面などから考えても、
大きな負担を伴ったはずだ。それも豪華俳優陣を擁し、年間を通じて放送される大河ドラマとなれば尚のことだが、NHKは貫徹した。
短いカットシーンにもこだわりを伺わせた。

 これまでも出演者が不祥事を起こすと、ドラマの再放送やソフト化が見送られるケースは少なくなかった。
だが「いだてん」は撮り直すことで、そうした懸念を払拭できた。今年4月にようやくDVD化された。
それを支えたのは多くの出演者、スタッフらの「いだてん」にかける熱い思いに他ならないだろう。

 社会現象になった朝ドラ「あまちゃん」(2013年)の制作統括を務めた訓覇(くるべ)圭氏と脚本家の宮藤官九郎氏(49)が再びタッグを組み、
4年がかりで構想を練ってきたという本作。歴史が苦手という訓覇氏は、海外にも手を伸ばし、過去の資料を調べ尽くした。
当初「オリンピックが好きな人が見ればいいというより、時代をオリンピックで見せていきたい」と意気込みを語っていた。

 異色ずくめの大河ドラマだった。中村と阿部サダヲ(50)のダブル主演による2部構成。
33年ぶりに近現代史を描き、初回は序盤の総集編のような作りでスタートした。
落語家・古今亭志ん生演じるビートたけし(73)は物語のナビゲート役。ストックホルムで約3週間の海外ロケも行った。

 異色ゆえか、視聴率は低迷し大河史上最低を記録したが、ネット上では称賛の声も見受けられた。
放送終了後、NHKの木田幸紀放送総局長(当時)は「今までにない大河を目指し、最後までそれを追求してくれた」とねぎらった。

 今年3月には宮藤氏が、第12回伊丹十三賞を受賞。これまでに糸井重里氏(71)、タモリ(74)、リリー・フランキー(56)、
是枝裕和監督(57)らが授与された賞で、「近現代を舞台にした異例の大河ドラマ『いだてん』のチャレンジングな脚本により
テレビドラマの可能性を広げた」と評価された。