高位幹部のほとんどが在籍経験のある高級党学校は、有力な人脈と人脈の結節点になる。自らの将来のため、ワイロを使わない手はない。そもそも、北朝鮮はワイロなしでは何事もできない社会だ。むしろワイロは「必要経費」として認識されている部分もある。それは、今回の摘発で対象とならなかった幹部たちも同様であり、その点に目をつぶらなければ、金正恩氏とて国家運営などできないはずなのだ。

件の政治局拡大会議では、朴太徳氏とともに李萬建(リ・マンゴン)党組織指導部長も解任された。党組織指導部は北朝鮮の政務と人事を一手に掌握する最強の官僚組織であり、そのトップのクビが飛んだことは驚きを持って受け止められた。両氏が遠からず、処刑されるものと見た向きも少なくはなかった。

ところが最近になって、李萬建も党中央委員会の(おそらくは組織指導部の)第1副部長として活動していることが確認された。降格させられたものの、なお健在なのである。

これほど大掛かりな不正摘発で責任を問われた幹部2人が、こんなに早く復権するのも意外である。もしかしたら今回の摘発は、金正恩氏がある特定の有力人脈を除去することを意図したもので、李・朴両氏の解任は、事態を素早く収拾するための「方便」だったのではないだろうか。仮にそうだとして、どのような有力人脈が標的になり得たかについては、機会を変えて考察してみたい。