8月25日は、声優・女優として長く活躍し、2018年に亡くなった麻生美代子さんの命日です。死因は老衰。92歳の大往生でした。1960年代の日本アニメ創成期から声優活動をされていたベテラン中のベテランで、国民的アニメである『サザエさん』やTV東京系の番組『和風総本家』のナレーションなど、耳にするだけで心が落ち着くような優しい声で、多くの人に親しまれました。幼稚園に入る前から麻生さんの声を聞き続けてきた、ライターの早川清一朗さんが追悼します。

【画像】『ハガレン』にも!麻生美代子さんの出演作

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 最後に聞いた麻生さんの声は『和風総本家』のナレーションでした。多分2017年か2018年だったと思います。番組のシンボルであるマメシバに「豆助?」と優しく語りかける声が、今も耳の奥に染みついています。おそらく、ずっと消えることはないのでしょう。

 さて、麻生さんと言えば『サザエさん』の磯野フネ役を1969年から2015年にかけて、実に46年間も演じられておりました。「麻生美代子」という名前は知らずとも、声を聞けば思い出す。そういった方もとても多いのではないでしょうか。数千万人、もしかしたら1億人を超える人が、麻生さんの声を心の奥にしまい込んでいるのかもしれません。

『サザエさん』の現場では最年長だったため現場の取りまとめ役となっており、長年、フグ田サザエ役として共演しておられた加藤みどりさんは「何かあれば麻生さんに相談できて、頼りになる先輩」と、麻生さんの存在を心強く思っていたそうです。また加藤さんは、麻生さんが亡くなられたとき、「趣味人でもありいろんなことに前向きな方で、80歳になられても声が出るし、滑舌も良く、先輩として皆の目標になっていました」と哀悼の言葉を語っています。