>>200 の続き

医療原案を担当されている富野さんは、現在も病院薬剤師として働いてらっしゃるそうですが、漫画のエピソードは実話をもとにしているのでしょうか?

富野浩充さん(以下.富野)
 実際に自分があたった症例に着想を得ているものもありますし、(論文などから)ストーリーとして成立しそうな症例を探してアイディアを膨らませることもあります。すべてが実話というわけではありません。
 荒井先生のお話にもありましたが、やはり、現実とエンタテイメントは違いますから、症例に対して治療がくどくなりすぎないように、調整する部分など編集さんと相談しながら進めています。たとえば医師とのやり取りひとつにしても、実際には別の選択肢を提示するなど食い下がる場面も、漫画では全体とのバランスを見てさらっとスルーするなどですね。
 確かに、漫画では、薬剤師が疑義照会等で医師や患者さんから否定されてしまうリアルなシーンも多く描かれていますよね。富野先生はこうした苦い経験をどのように乗り越えましたか。

富野
 これは難しいですよね。
 時間をかけて風化させるか「どこかで創作のネタにしようか」と考えるくらいです。

患者さんに認識されず…「薬剤師あるある」に共感!

苦い経験も創作のネタに…ということでしたが、富野先生がこれまでのストーリーでもっとも共感したエピソードについて教えてください。

富野
 接遇について扱った9話で、葵みどりのお団子頭が医療従事者としてふさわしくないと指摘されるシーンがあります。これは彼女なりの「薬剤師として認知されるための工夫」なのですが、実際 薬剤師は患者さんに認知してもらえないことが多いですね。女性は看護師に、男性だと医師と間違えられることがあります。
 あとは、3巻の冒頭。部長の的はずれな朝礼コメントに対するみんなの思いはぜひ見ていただきたいですね。上の立場になるほど、現場との意識のズレが出てきます。そこを埋めるためにはどうすればいいか、ぜひ管理職の皆さんに考えていただくきっかけになれば。

確かにずれていますね…