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脱退してもIWCの傘の下
IWCを脱退した場合には、同条約8条で加盟国に認められている科学研究のための捕獲を許可する権限が、なくなる。
現在、日本政府の特別許可証を持った日新丸船団は南極海にいて、クロミンククジラを上限333頭、調査のために捕獲しつつある。
帰港は2019年3月末日までのどこかだ。脱退が確定する前に、南極海産クロミンククジラの最後の陸揚げをして、南極海での30年にわたる調査捕鯨は終了となるはずだ。
調査捕鯨を担ってきた捕鯨母船の日新丸
https://image.chess443.net/S2010/upload/2018122500004_3.jpg
その代わり、IWCで現在中止となっている商業捕鯨の実施が、脱退によって可能になる。
だが、国際捕鯨取締条約の「傘」を外れてしまうので、他の国際条約の縛りに直接さらされて、商業捕鯨は非常に厳しい条件下で実施することになる。
まず、国連海洋法条約(1994年発効)だ。65条によれば、もし南極海で捕鯨をするならば、適切な国際管理機関を通じて、関係国と協調しながら進めなければならない。
「適切な国際管理機関」であるIWCを脱退するので、IWCに代わる組織に所属する必要がある。
しかし、現状では設立の動きがない。
なぜ、「適切な国際管理機関」が作れないかというと、南極海ならば、オーストラリア、ニュージーランドとの協調は外せない。
どちらも、いわゆる「反捕鯨国」だ。日本が捕鯨をするために協力する国々ではない。
日本周辺海域はどうだろう。アメリカ、ロシア、北朝鮮、韓国、中国などと協調して、日本が自国近海で行う捕鯨に付き合ってもらえるだろうか? 
じつは、1998年にロ・中・韓と4カ国での設立が試みられたことはあるが、実現しなかった。
そこで、65条が「適切な国際管理機関を“通じて”」としていることをよりどころにして、当面はIWCにオブザーバー参加することで、65条の要件を満たせる、と日本は解釈している。
オブザーバー参加がすんなりいくかどうか、IWC加盟国の動きが気になる。
それもさることながら、三行半を突きつけて出て行ったと思ったら、軒先を借りるのだという。
しかも、脱退したから商業捕鯨を再開するけれども、公海には行きません、といい、日本の排他的経済水域の半分も利用しない考えのようだ。
これはいささか奇妙な判断だ。
なぜならば、1997年にIWCにおいてアイルランドが提案し日本が強く拒否した妥協案が「公海での捕鯨をやめる代わりに、日本沿岸での商業捕鯨を認める」というものだったからだ。
2010年に当時のIWC議長、チリ政府代表であるマキエラ氏がまとめた妥協案でも「沿岸域に捕獲枠を認める代わりに公海域での捕獲を大幅に減らす」内容が盛り込まれていた。
さかのぼれば、1988年には米国が日本に対して「南極海での調査捕鯨をやめるならば、沿岸小型捕鯨の捕獲枠を認めるよう各国に働きかける考えがある」と日本に打診してきている。
加盟国としていずれをも受け入れてこなかった日本が、このたびIWCを脱退した上で、事実上これらの妥協案を自ら選択したことになるからである。
脱退になんのメリットを見いだしたのだろう。