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【佐久間淳子】「脱退の意味を保護側から考える」
http://ika-net.jp/ja/home/16-japanese/activity/whaling/362-extra-inn2019jan

●輸入を続けられるのか
IWCでは、加盟国同士の輸出入にとどめること(1979)、調査捕鯨の肉は主として国内消費にとどめること(1986)を、決議しています。
そのため、アイスランドが2002年にIWCに再び加盟を申し込んだのも、日本にナガスクジラの肉を輸出するのが目的だったと言われているし、
自国周辺での調査捕鯨を経て商業捕鯨に踏み出してから、日本への輸出を開始したのも、この決議に従っています。
そのため、日本が脱退したならば、アイスランドやノルウェーは、日本には輸出できないことになる、はずだと筆者は思っていました。
ところが、この決議には拘束力がないので、加盟国たるアイスランドもノルウェーも、脱退したあとの日本にも、輸出するつもりでいるようです。
アイスランドの日本向けナガスクジラ捕獲業者、クバルル社のロフトソン氏は、報道機関のインタビューに答えて
「日本政府は、商業捕鯨の鯨肉に補助金を付けて小売価格を抑えるべきでは無い」と発言しています。
調査鯨肉より格段に安いことで日本市場に定着したアイスランド産ナガス肉の売れ行きに関わるからです。
アイスランドが捕るナガスクジラは、100%日本への輸出用。
2018年はナガスクジラの捕獲枠161頭のところ、145頭の捕獲に終わりましたが、仮に1頭あたりの肉の生産量を20トンとすると、
約3000トンのナガスクジラの肉が、日本の市場向けに用意されたことになります。
この規模は、日本が近年調査捕鯨の副産物として供給してきた鯨肉の年間総量を上回ります。
ノルウェーの最近の捕獲数は、2015年には660頭、2016年には591頭、2017年には432頭で、ノルウェーの国内需要は500頭前後とみられます。
これに対して2018年の捕獲枠は1278頭。日本が買うなら捕るぞ、ということでしょう。1頭2トンと仮定しても、1500トン以上になります。
ノルウェーからの鯨肉輸入は、年100トン台で推移しているものの、潜在的な供給力はあるといえます。
両国あわせれば、5000トン近い鯨肉を、日本のために用意できるということです。
日本政府が「足りない分は輸入で」というのはこのためだと思われます。
両国に不安材料はあります。アイスランドは、ナガスクジラの捕れる捕鯨船が1隻だけ、相当古い船ですし、捕獲枠の見直しがどうなるかはわかりません。
ノルウェーは、加熱調理が原則の国内需要に合わせた捕獲・解体・流通の仕方を取ってますから、刺身で食べたいとか、
生肉の見た目で品質を判断する日本市場には向かないようです。
わざわざ日本仕様の鯨肉を生産するために船や加工場を新造新設するとは考えにくいでしょう。
また、脱退後に加盟国からの輸入を続けていれば、IWC加盟国は、特にいわゆる反捕鯨国は一斉に反発するでしょうし、
「オブザーバー参加資格」を質す動きも出るでしょう。
しかし次回の総会開催は2020年、おそらく秋の開催ですから。それまでは非難決議も出せません。
出たところで「非加盟国のあっしにゃあ関わりのねえこって」とタカをくくるつもりでしょう。