時計修理士の殆ど全員が自動巻き時計の手巻きはあくまで補助であまり手巻きするのは良くないと言っている。
修理店では実際に自動巻きを手巻き時計のように使って摩耗で壊れた個体が持ち込まれる事例が少なくないからな。

自動巻き時計を手巻きすると、自動巻き時ではありえない速度で自動巻き機構が猛烈に回転し、切り換え車のクラッチ爪やマジックレバー爪が巻き上げ車が激しく衝突しながら滑り摩耗するしオイル切れも早くなる。

ブランドでは時計初心者のユーザーも多いknotが
8R(6Rの二階建てクロノ)を載せた時計にも「自動巻きを手巻きし過ぎると摩耗して壊れるるしあくまで補助的な物です」と明記している。
日常的に手巻きして壊れて巻き上がらなくなった事によるクレームが少なくないからだろう。

6Rと比べて9Sのクラッチ機構や自動巻き機構に特別な配慮がされているわけでは全く無いので、GSだけは手巻きしまくってもいいという珍論は無理筋。

百歩譲ってセイコー自身が特別な機構や素材を採用して手巻き時の自動巻き機構の耐久性を高めていると正式にムーブの特徴に記載しているならともかく
9Sの自動巻き機構は素材もごくフツーなので、他社の自動巻きが手巻きすると摩耗するのにセイコーだけは手巻きしまくっても問題無い論は無理がある。

自動巻き時に手巻き輪列を切り離す機構は、6Rよりも9Sのほうが簡素でたよりない機構(ペラペラのチープな揺動バネ一つ)なのでこの箇所も9Sのほうがむしろ6Rより弱いぐらいで、手巻きしまくっても問題ない論は無理筋。
実際9S55時代はこの揺動バネのまわりが汚れて不具合が発生している個体がよくあった(9S6系では多少改良されているが弱い事には変わりない)。