ストラボン  エチオピア地誌
一 風土と住民
 エチオピア地方誌については本書はすでに多くのことを述べたから、この民族の諸地域もすでにエジプト地方に含めて記述
を終えているといってよいかも知れない。
 悪条件の風土  総じていえば、人の住む世界のなかの極地帯は、暑熱や寒冷が原因で寒暖の調和が悪く住むことの出来な
い気候帯のそばに位置しているから、調和のよい気候が欠落した落第品にならざるをえない。
 遊牧生活  このことは、それぞれの地域の暮らしぶりや人間生活に必要な諸条件が欠けていることから見ても、あきらか
である。この地帯の住民は暮らしも劣悪で、身体でも剥き出しにしている部分の方が多く、遊牧生活をしている。
 家畜も小型  家畜は羊、山羊、牛を所有しているが何れも小型だし、犬も小型だが、ただしこちらは気が荒く戦闘的であ
る。人びとは多分、これら家畜が生まれつき小型であることからヒントを得て、小人族ピュグマイオイがいるのではあるまい
かと思い、その物語を創作したものだろう。その証拠に、信用できる人びとのなかで、直接見た上で記述している作家はひと
りもいない。