(続き)
 
・・・戦後日本の憲法学が学問ではなく政治宣伝と言っていいのは、英米の憲法思想を事実上全く抹殺するか、歪曲するからである。

例えば「人権」と「国民主権」を断固排除した米国憲法が、英国と同等若しくは英国以上に「保守主義の精神」で貫かれて起草され、
制定されたという、初歩的事実すら、(わが国では)如何なる憲法教科書にも書かれていない。

米国憲法が最も依拠したのが「法の支配」を理論化した17世紀初頭の英国のエドワード・コーク卿であり、
米国憲法の根本を定めたアレクサンダー・ハミルトンは、このコーク卿の思想的嫡流であるが、コークやハミルトンの名は(現代日本の)殆どの憲法教科書に見当たらない。

そもそも正しい憲法理論はエドマンド・バークによって完成したのであり、バークに学ばない憲法学など、偽りである事は明白である。 〜〜

(『正統の憲法 バークの哲学』著/中川八洋 [中公公論新社/2001年])