待つこと20分。テントの中からVIPたちがぞろぞろ出てきた。
テリー会長の姿もある。囲もうとする報道陣。それを遮る黒シャツ軍団。
くんずほぐれつを尻目にVIPたちはバスに乗り込む。
市政府の要人たちに手を振り、お辞儀をするテリー会長。
黒シャツ軍団のガードが固く、テリー会長を囲める雰囲気ではない。

 「ああダメか」と、くじけそうになる自分。

「いや、お前はなんのためにここにいるんだ」と自分を励ます自分。

 いつしか、私は大声を出していた。

「サー、ワン・クエッション!(会長、1つだけいいですか!)」

「なんだ」と訝しげにこちらを見るテリー会長。だが振り向いてくれたらこちらのものだ。

「東芝の半導体事業、買うんですか!」

 下手くそな英語で聞くと、テリー会長はつかつかとこちらに向かってきた。

「なんだって?」

 こちらを睨みつけ英語で答えるテリー会長。

「東芝の半導体事業、買うんですか」