南北朝鮮は9日、平昌(ピョンチャン)冬季五輪への北朝鮮代表団派遣や軍事当局者会談の開催などで合意した共同報道文を採択した。
複数の関係筋によれば、北朝鮮は昨年末、五輪での演奏公演を韓国に打診。北朝鮮内部では、故・金正日(キムジョンイル)総書記が創設した旺載山(ワンジェサン)芸術団の派遣を検討しているという。

 報道文には、北朝鮮が五輪に「芸術団」を派遣することを明記した。
昨年末、南北音楽交流を手がける韓国側の関係者が統一省に「五輪期間中、北朝鮮音楽家の訪韓を認められないか」と問い合わせていた。

 別の関係筋によれば、芸術団派遣は、核・ミサイル開発の印象が強い北朝鮮のイメージを和らげ、制裁や軍事力行使に反対する世論を韓国内に作ることが狙いだという。
旺載山芸術団は1980年代、市民が親しみを感じるようにギターやピアノなど西洋音楽の要素を取り入れて創設。民族衣装を着た女性の独唱や舞踊を行う。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長も音楽による政治宣伝を重視するが、正恩氏の肝いりで創設された女性グループ「モランボン楽団」の派遣は検討されていない模様だ。
別の関係筋は「モランボン楽団は国の宝。今の北南関係は同楽団を派遣するまでには改善されていないということだ」と語った。

 また、10日付の労働新聞(電子版)は9日の南北合意共同報道文を掲載し、韓国には「外部勢力に依存しては絶対に北南関係の問題を解決できない」、
米国には「核強国である我々との共存の方法を探すのが賢明だ」とそれぞれ主張した。

 一方、韓国の李洛淵(イナギョン)首相は10日、企業との懇談会で、北朝鮮代表団の規模は「400人から500人程度」と語った。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は10日の会見で、平昌五輪の機会に北朝鮮高官が訪れることに期待を示し、「可能なら、五輪期間中に対話に至ることを望む」と語り、南北関係改善と核問題解決につながる条件が整えば、南北首脳会談もありうるとの考えを示した。
ただ同時に、韓国は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議を順守すると強調した。(ソウル=牧野愛博)