今、ヨーロッパの多くの国々が直面している移民の問題で、分断の大きな要因となっているのは、新しく入ってきた移民が、これまで自分たちが築き上げてきた社会保障などの制度に、言わば、ただ乗りして、更に、そのせいで、自分たちはそれを十分に利用できないのではないのかと云う、漠然としたイメージの上に成り立った不公平感らしい。

だから、この作品の中で要件として提示される、”まだ学ぶ機会を与えられるべき若さの有無(年齢制限)”と、”就学の機会を有している”ことが議論になっているのだ。
若くして学び、就業してフランスに納税出来るか否かということだ。

ここを抑えておかないと、この作品は、単に感情を揺さぶられる作品に陥ってしまいそうな気がする。

政府も手をこまねいているだけではない。常に国民の中に溢れる感情や漠然とした恐怖・怒りとの落とし所が議論されているのだということだろう。

残念なことに日本には落とし所も何もないような感じがする。

男が中心のように感じられる料理の世界にあって、孤軍奮闘するカティの姿も実は象徴的なのではないのか。

多様性と、移民という人道的・社会的・政治的、そして感情的問題。

ブレイクスルーするダイナミズム。

それでも指の間からこぼれ落ちてしまう人間がいるという現実。

しかし、それでも前進や継続が重要だというスピリットを伝えようとしているのだと思う。

だから、オリジナルタイトルは「brigade」なんだと思う。
組織的にチームとして戦うことが重要なのだ。

「Oui」