新・水滸伝(四)吉川英治文庫
漸く三回目の招安が、正義の臣、宿大尉の手でもたらされ、梁山泊一同
は天下晴れて都入りをし、記念の大パレードが行われ、幹部は親しく
天子からお言葉を賜う日が来た。
しかしながら、梁山泊軍の喜びも天下の平和も束の間に終る。
またまた佞臣のたくらみである。だが宿大尉の真情で宋江軍は宋国境の
外敵にふりむけられ、以後転戦また転戦。常勝の梁山泊軍も無傷のまま
というわけにはいかず、次々と戦死、中には新天地を求めて国外へ
出ていく同志もある。
この間、原典は激戦場面の克明な描写ばかりでなく、あたかも一幅の
宋画を眺めるように大陸の自然美、雄大な風景を叙し、天子とその愛人
のれんめんたる愛の場面を加えることも忘れていない。
宋江の苦戦には青衣の女人が夢枕に現われて策を教え、敵軍の降将たちも
宋江軍に加わって義軍の名誉を共にする。道教の幻術師が味方を
悩ますかと思えば、宋江が病に倒れたり、戦線がどうにもならぬ膠着状態に
なったりで、読者は、はらはらし続けるだろう。
以下、省略。